富山県滑川市。
そう、見渡す限り田んぼ。電柱すら見えない。
本当に電気が通ってるのか?(余計なお世話)
もうずいぶん背が高くなった稲の間を、
真っ白なしらさぎが大きく歩いている。
ばさばさばさっ
人の気配を感じたのだろうか、一斉に飛び立った。
そして、その方角は限りなく岐阜方向に近かった。
午前6時。岐阜市祈年町でかかっているであろう、
それと同じミニー・リパートンの歌声で目覚めた。
鏡に向かってはさ屋の石鹸で顔を洗った後、
眉毛を剃った。(ヒゲじゃないんだから…)
そして、丁寧に丁寧に撫でるように描いた。
だって、今日は岐阜へ行く日なんだも〜ん。
[富山−岐阜]と印字された乗車券を財布から出した。
でも、なんで隣県なのに特急で3時間半もかかるのさ?
ま、いっか。
とにかく特急しらさぎに乗り込むわ。
あ、今日、私が岐阜へ行くことを
杉山さんは忘れているだろうから、
ちょっとメールで連絡しておこう。
「今ね、鬼門の加賀温泉駅を過ぎたとこ」
そう、鬼門の加賀温泉とは、以前、電車に乗ったはいいけど、
保育園から呼び出しがあって引き返した、その駅なのだった。
母の恋路をじゃまする気なの?次男!
いや、普通、母に恋路はないと思う…
ねぇ、みんな引いてる?
でも、別に岐阜まで行って会っても何も話すことなんかない。
PBHLがあるから、いつも文字で何でも話しているも〜ん。
うーん、私の旦那の話でしょ、
えっと、彼の奥様の話でしょ、
あとは共に知ってる熊本純子。
そう、私は富山のサラリーウーマンだから、
経営の話よりも人生について話したいのだ。
でも、「お前はニューハーフ顔だ」としか書いてくれない。
私がいつまでも耐えつづける女と思っていたら大間違いだ。
だから、別に年にたったの一度ぐらいは、
顔見て話してもバチは当たらないと思う。
面倒臭いからそういうことにしておこう。
大垣駅を過ぎた。
読んでいた横山秀夫の『半落ち』から顔を上げ、
今日こそ、杉山弘道を“完落ち”させてみせる、
と誓った。(意味不明)
ねぇ、みんな引いてる?
そして、2度目のJR岐阜駅に降り立った。
特急しらさぎ号は名古屋方面に消え去った。
私は歩き出す。
改札を抜けるとなぜかドキがムネムネする。
「ナカタ、どうせヒマだから、まぁ夏にでも会うか」
PBHLに口先だけの失礼なことを彼が書いたから、
私が今ここにいるってことをきっと彼は忘れている。
でも、時にコトバは何かを動かす。
だから、私は彼の鳩胸に向かって、
熱いコトバを投げつづけるだろう。
杉山さんを見つけていなくても、私は私で人生を楽しくやっているとは思う。
でも、彼を知ってしまったなら、人生に杉山弘道はあった方がいいって思う。
ねぇ、みんな引いてる?